アイテム手帳:跡地

ITやデジタルのアイテムを、暮らしの中で「楽しく」「賢く」使うためのチュートリアル

“本棚”は持ち主ではなく、見る人に合わせて変わっていく「本屋になりたい」

「この本は棚にどんな人を連れてくるだろう」と思いうかべ、その人の目や足の動きを考えながら本を並べる。本屋の棚は、最終的には本よりも人に合わせてつくられていきます。図書館のように本の内容で分類を決めるのではなく、その本を読む人を想像して、楽しんで見てもらえる棚にするのです。ー2章 本を売るー 「本屋になりたい ――この島の本を売る (ちくまプリマー新書)」
 

地元の沖縄で「市場の古本屋ウララ」を経営されている、宇田智子さんの著書「本屋になりたい ーーこの島の本を売る」より、本棚に関するひとこと。

 

 「本屋の棚は見る人(購入者)に合わせて作る」という著者の主張は、自然に納得できるものであろう。番号順に並べた方が管理はしやすいだろうが、「誰が見るのか」という視点が大事なのである。

 
例えば「読書論」をテーマにしたとしても、内容は、批評の仕方、本の選び方、紙の歴史など、多岐にわたってよいだろうし、形式も、エッセイ、小説、漫画、などと、縛りをもうける必要はない。見る側の「関心」を第一に考えたラインナップにすることで、本棚を眺めたときに目にとまりやすくなるのである。
 
大型店などでは「フェア」という形で同様のことをしているが、本のジャンルにかたよりが出る「古本屋」だからこそ、ひとつひとつの本棚でそういった工夫ができるのかもしれない。最近では、こういった棚の並べ方を工夫する小型店というのも増えてきたように思う。
 
本書の中では、もう一歩すすんで、本棚は見る人に合わせて、月日と共に「変わっていく」のだとも語られている。読者の目にとまり売れた本は再入荷され、目にとまらなかった本は棚から外される。読者が一番の仕入先である「古本屋」はよりその色合いが強い。
そうしてできた、著者の古本屋の本棚は、「沖縄」に関連した本が大量に並んでいるのだという。「沖縄」本といえば「市場の古本屋ウララ」というまでになっているのだそうだ。
 
これは、少し角度を変えると「個人の本棚」についても同様のことがいえるだろう。来客がある部屋、家族の部屋、自分しか入らない部屋、それぞれで見る人が違い、本棚のラインナップが変わっていく。自分のようにクラウドで本棚を作っている人はとくにそうかもしれない。周りの人の目が少なからず影響して、本棚を作り変えていくのである。
 
本屋といえば、このサイト「ひとことブックス」も、WEBの本屋を目指して立ち上げたサイトだ。サイトにおいての「本棚」はなんだろう、と考えてみると、「カテゴリー」が同じ役割を持っているといえるかもしれない。
記事の末尾に「関連記事」として、同じカテゴリーの記事が表示されているのを見ると、本屋の本棚で目移りするあの感覚に近いものを感じる。
 
そう考えると、「カテゴリー」に本の記事をひとつずつ増やしていく行為は、「本棚」に本を並べる行為と同じようなものである。今回の「ひとこと」で語られていた、「その本を読む人を想像して、楽しんで見てもらえる棚」という目線はサイト作りにも言えるのだろう。
 
本屋になりたい ――この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

本屋になりたい ――この島の本を売る (ちくまプリマー新書)